紫外線の威力
紫外線殺菌灯の仕組み
殺菌灯で殺すことができるものは
どの製品を選べば良いのか
殺菌灯はあったほうが良いのか
Q&Aコーナー
紫外線の威力
紫外線殺菌灯は紫外線を使って細菌を殺してしまうものです。
紫外線に殺菌力があるということはよく知られています。布団などを太陽の光にかざしておくとバイ菌が死ぬといわれている日光消毒というものがあります。これは太陽光線に含まれている紫外線によって殺しているのです。
日光消毒と同じように水槽の中のバイ菌を紫外線で殺すようにした装置が紫外線殺菌灯です。
紫外線というのは光の一種で、広くは電磁波の中の一部分です。
光は目に見えますが紫外線は紫色の光より波長の短い光で人間の目では感じない光です。
紫外線は可視光線よりは波長が短いのですが、その紫外線の中にも波長の長いものから短いものがあって A,B,Cに分けられています。
波長の長いものから、UV-A、UV-B、UV-Cとなっていて、太陽からはこの三つの紫外線が赤、緑などの可視光線と共に地球に届いています。
紫外線の波長は短いものほど殺菌力が強く、UV-Cが一番強い殺菌力があります。
私たち地球上の生物はこのUV-Cに当たり続けていると、象だろうがアリンコだろうがほとんどの生物が死んでしまいます。
地球上にそれほど強い殺傷力を持った紫外線がに届いているのに、生物が生きていけるのは波長の短い紫外線の方が、物体に吸収されやすいという性質を持っていたからです。
地球の上空にはオゾン層ができていて、このオゾン層にUV-C、UV-B、UV-Aの順に吸収されてなくなっています。UV-Cについては全部が吸収されて消えてくれているのです。
地表で生活している私たち生物のもとには、少しのUV-BとたくさんのUV-Aが届いているだけなのです。UV-BとUV-Aだけでは比較的大きな生物は生きていけますが、細菌のような小さな生物は死んでしまいます。
生物というのは、DNA(デオキシリボ核酸)という、糖と燐酸と塩基でつくられたものと、蛋白質でつくられている酵素の働きによって生きています。
DNAというのは、その生物の設計図のような、作成マニュアルのようなものです。
酵素というのは、その設計に従って作ったり、組み立てたりする工具や機械のようなものです。
生物は、DNAの設計どおり酵素が同じものを作っているのです。
その時に必要となる原料が食べ物です。その時必要な動力が酸素です。植物の場合は光も使って光合成で糖をつくりだします。
生き続けているということは、古くなったものを壊して捨て、新しい同じものを作り出し常に新しいものに置き換えて生き続けているのです。これを新陳代謝といいます。
いつも同じものが作られていくのですが、作り変えていくときに異常なものがつくられてしまうことがあります。前にあったものと違うものになってしまうとうまく機能しなくなります。
正常に機能しなくなった状態が病気です。
病気になった時に設計図を見直し、元に戻すことができれば病気が治ったことになります。
設計図の一部が、何らかの原因で書き換えられてしまった状態がガンです。
設計図が違ってしまったので、異常なものが次々作られてしまいます。
異常なものが増えていけば病気はどんどん重くなっていきやがて死を迎えます。
発がん物質というのがありますが、この物質はDNAの一部を書き換えてしまう能力がある物質なのです。設計図が変わってしまえば体にどんどん異常な部分が増えていきます。
だから発がん物質に触れたり食べたりしないよう注意をしなくてはならないのです。
紫外線も発がん物質と同じようにDNAに影響を与えてしまうものなので、生物にとって危険なもので弱い紫外線でも細菌なら殺すことができるのです。
紫外線殺菌灯の仕組み
紫外線中最も殺菌力が強いUV-Cを使って殺菌する器具が紫外線殺菌灯なので強力に細菌などを殺すことができます。
紫外線殺菌灯はガラス管の中で紫外線を発生させ、ガラス管の周りに水槽の水を流し入れて紫外線を当てるようにした器具です。ここで使われているガラス管はGL管(紫外線透過ガラス管)といいます。GL管の紫外線の透過率は
75%です。25%はガラス管に吸収されて消えてしまいます。
ガラスは紫外線を受けていると分解されてだんだん透過率が落ちていきます。
2,000〜3,000時間経過すると、透過率は 50%にまで落ちてしまいます。
透過率がここまで落ちた状態になったら殺菌灯を交換しなくてはなりません。
石英ガラスはGL管より性能が良く、紫外線透過率は 100%あります。そして、この管は6,000時間経過した後でも、75パーセントの透過率が残っています。
すなわち、石英ガラス管を使った紫外線殺菌灯は 8ヵ月経ったとしても、GL管の新品と同じ透過率があることになります。石英ガラス管を使った紫外線殺菌灯はGL管のものより数倍長寿命です。ただし紫外線殺菌灯は長く使っていくうちだんだん紫外線の発生する量が少なくなっていきます。
光としては出ていても、紫外線のない光になってしまうわけです。
そうなると殺菌力は無くなってしまいます。
そのため、紫外線殺菌灯の交換はGL管の方はガラス管の寿命の4,000時間程度、石英ガラス管の方は紫外線発光そのものの寿命8,000時間程度になっています。
紫外線は細菌以外にもコケの原因となる藻の胞子やカビの胞子なども殺します。
紫外線殺菌灯をつければコケの発生も少なくなり、濁りの原因物質も分解しますので水の透明度は上がります。
紫外線は人間に対しても有害なので取り扱いは慎重にすることが必要です。
UV-AやUV-Bは日焼け程度で済んでいますが、紫外線殺菌灯はUV-Cですので危険です。
ただ、紫外線は水中だと空気中の 1/5程度しか進めませんので狭い範囲にしか影響させることができません。
そのため水槽で使う紫外線殺菌灯は、紫外線を通さない筒の中に紫外線ランプを入れています。水を筒とランプの狭い間に流して殺菌するようにしています。狭い間でしか紫外線の影響が出ませんので流れ出た水は安全です。
そのため紫外線殺菌灯を使っていても人間にも水槽の中の魚や生物にとっても心配はありません。
殺菌灯で殺すことができるものは
メーカー・品名 | ランプW数 | 放射出力 |
---|---|---|
カミハタ ターボツイストZ 9W |
9W | 9,580 |
カミハタ ターボツイストZ18W |
18W | 11,400 |
カミハタ ターボツイストZ36W |
36W | 11,400 |
ナプコ ライフガードQL10 |
10W | 21,800 |
ナプコ ライフガードQL25 |
25W | 16,900 |
ナプコ ライフガードQL40 |
40W | 17,910 |
テトラ UV−13W |
13W | 9,510 |
テトラ UV400 |
5W | 7,940 |
レイシー UVF−600 |
11W | 15,000 |
レイシー UVF−1000 |
15W | 22,000 |
ゼンスイ UVクリーン13 |
13W | 8,000 |
1.濁りの原因となる浮遊
している細菌や、その細
菌を餌にしているバクテ
リアなを殺してしまいま
すので、水が透明になり
ます。
2.水によって運ばれてい
るコケの胞子を殺します
ので、コケが増えにくく
なります。
3.浮遊している病原菌
・ウィルスや白点虫(ク
リプトカリオンイリタン
ス)の仔虫を殺しますの
で、これが原因でなる
病気が減ります。
4.浮遊している腐敗菌
も殺しますので、臭い
もなくなり、食べ残し
の餌なども腐りにくく
なります。
といった効果が期待できます。
では、各社で発売されている紫外線殺菌灯のうち、どれを選べばいいのだということになります。
紫外線殺菌灯の能力は
1.紫外線ランプからの距離が近いほど良いのですが、この距離を考えて各製品とも管の太さが作られていますのでこれについてはあまり差がないと言えます。
2.紫外線に照らされている時間が長いほど効力を発揮します。水が管の中を速いスピードで通り過ぎたのでは、ほとんど紫外線の影響を与えることができません。そのため各製品で水を流す流量(L/分)が示されていますのでこれに従っていれば能力を発揮させることができます。
管の長さが長いほど流量が少ないほど紫外線は長く当たりますので効果があることになります。
3.紫外線ランプの放射出力が大きいほど殺菌効果は大きくなります。
放射出力は上表のように製品により違っていますので、数値の高いものを選べば大きな効果を得られます。
放射出力は、ランプが新しいときの数値で、使っていくうちに数値が下がっていきます。
放射出力(照射度または放出出力)は使っているうちに減っていきますので、普通GL管は半年で新品に交換、石英ガラス管で1年で交換する必要があります。
どの製品を選べばいいのか
紫外線殺菌灯はライフガード、テトラ、アズー、東熱、レイシー、カミハタ、ニッソー、日成、コトブキ、ゼンスイなどの製品があります。
メーカーの公表している数値と現在市場で売られている大体の値段を並べると下の表のようになります。予算との兼ね合いもありますので比べてみてください。
品名 | 水槽水量(L) | ポンプ流量 (L/分) |
ランプW数 | 本体参考価格 | 替ランプ 参考価格 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
ライフガード QL15 |
450L以下 | 20L/分以下 | 15W | 27,800 | 7,800 | |
ライフガード QL25 |
600L以下 | 48〜65L/分 | 25W | 28,000 | 8,000 | |
ライフガード QL40 |
1300L以下 | 95〜127L/分 | 40W | 50,000 | 9,400 | |
東 熱 10W |
80〜120L | 8〜12L/分 | 10W | 20,000 | 2,700 | 石英管なしタイプは \15,000 |
東熱 15W |
120〜180L | 12〜18L/分 | 15W | 24,000 | 3,400 | 石英管なしタイプは \18,000 |
東 熱 20W |
250〜350L | 25〜35L/分 | 20W | 30,000 | 4,000 | 石英管なしタイプは \23000 |
東 熱 30W |
80〜120L | 5〜10L/分 | 30W | 38,000 | 4,300 | 石英管なしタイプは \27,400 |
カミハタ ターボツイストZ9W |
300L以下 | 10〜25L/分 | 9W | 16,800 | 2,000 | |
カミハタ ターボツイストZ18W |
600L以下 | 20〜50L/分 | 18W | 22,800 | 5,100 | |
カミハタ ターボツイストZ36W |
1200L以下 | 17L/分 | 36W | 29,800 | 7,000 | |
テトラ UV400 |
50〜400L | 2〜20L/分 | 5W | 9,434 | 3,200 | |
テトラ UV−13 |
450L以下 | 15〜30L/分 | 13W | 7,980 | 3,900 | 12V仕様 インバータ式 |
レイシー UVF-600 |
600L以下 | 20〜40L/分 | 11W | 31,588 | 5,800 | |
レイシー UVF-1000 |
1000L以下 | 15〜20L/分 | 15W | 52,788 | 21,000 | |
レイシー VC−8N |
150L以下 | エアーリフト式 | 8W | 22,000 | 10,000 | |
ライフガード アクアステップ10W |
400L以下 | 12L/分 | 10W | 23,108 | 8,600 | マキシジェットポンプ付き |
ライフガード アクアステップ15W |
500L以下 | 20L/分 | 15W | 31,588 | 9,600 | マキシジェットポンプ付き |
ライフガード アクアステップ25W |
600L以下 | 30L/分 | 25W | 39,008 | 10,600 | マキシジェットポンプ付き |
日成 NS−4S |
50〜200L | エアーリフト式 | 4W | 13,569 | ||
ゼンスイ UVクリーン13 |
500L以下 | 13W | 5,990 | |||
コトブキ ウルトラV6 |
300L以下 | 6W | 28,048 | 7,000 | ||
コトブキ ウルトラV10 |
600L以下 | 10W | 33,000 | 11,000 | ||
アズー UV―C9W |
200L以下 | 9W | 7,840 | 3,540 | 12V仕様60cm以下水槽用 |
殺菌灯はあったほうが良いのか
紫外線殺菌灯は効果がないという人もいます。効果がないと感じているのは次のような理由からです。
1.あまり変わらない
ワット数の低い紫外線殺菌灯の場合は、紫外線の能力が低いのでわずかにしか影響を与えられません。そのため効果がないと感じてしまいます。
能力の比較は放射出力(μW・s/cm2)で分かります。
水槽の大きさに適した紫外線殺菌灯でなければ、期待した殺菌力が得られないのは当然ですし、早い水流で殺菌ランプを通り過ぎたのでは、充分な殺菌力を得られないのは当然です。
2.白点病が減らない
白点病は魚に寄生する白点虫によって引き起こされる病気です。
紫外線で白点虫を退治するには直接白点虫に紫外線を当てなければなりません。
白点虫は魚の体内にいるかシストの状態になっているかで、ほとんど紫外線殺菌灯の中に流れ込んできません。そのため白点虫に紫外線を当てることはできません。
紫外線殺菌灯の効果を発揮させることができるのは、白点虫の仔虫が魚の体から離れて殺菌ランプのところに流れ込んだ時だけです。
また、白点虫の仔虫は細菌やウィルスなどよりずっと大きいため、放射出力の大きな紫外線ランプを必要とします。放射出力の大きな紫外線ランプなら仔虫も殺せます。
流量の多い水流ポンプを使っている場合も、わずかにしか紫外線を当てることができず仔虫を殺すことができません。
3.コケが減らない
コケは胞子が浮遊して繁殖していますので、この状態で紫外線殺菌灯の中に流れ込んできたものは殺すことができます。
でも、すでにガラス面や岩などについてしまっているコケは、紫外線殺菌灯の中に流れることがないので、これらのコケはまったく減らないことになります。
既にできているコケが減らないのを見て効果がないと感じてしまいます。
コケが生えていない最初から殺菌灯を使った場合は、胞子を次々分解していくのでコケは増えていきません。
逆に殺菌灯によって硝化バクテリアなどの有用細菌が殺されてしまうと心配になる人もいると思います。硝化バクテリアなどは岩や砂、濾材などに張り付いているものなので、紫外線殺菌灯の中には流れ込んできません。なのでこれらのものが減る心配はまったくありません。
ただ水槽の立ち上げ時で、水が出来上がっていないときは、まだ有用バクテリアが活着してなく、水の中に浮遊した状態のため紫外線ランプで殺されてしまいます。
この時期は、紫外線殺菌灯は点灯しないようにする必要があります。
正しい使い方をすれば殺菌灯は大きな効果が得られる器具ですので金銭的に余裕がある人は設置するとよいと思います。
1.白点病がなくならないので殺菌灯を付けて予防しようと思いますが、
値段の高いものと安いもので違いがあるのでしょうか?